2026/8/4 / 海外フォーミュラ / GRIDLINE 編集部

FIA F2フィーチャーレースのピット戦略入門|義務停止、タイヤ2仕様、VSCの注意点

FIA F2の日曜フィーチャーレースでは、走行中の順位と最終結果が同じ景色にならないことがある。まだピットストップを済ませていない首位と、停止を終えた実質的な首位が同時に走るからだ。戦略を読み解くには、「いつ止まれるか」「どのタイヤを使うか」「その停止が義務を満たすか」を分けて考える必要がある。

本稿は、FIAが2026年6月25日に公開した2026年FIA F2スポーティング規則V2(PDFの表記はV3、6月24日付)を基に、フィーチャーレースのピット戦略を観戦者向けに整理する。大会固有の指示や後日の規則改定がある場合は、各大会の公式文書と最新版の規則が優先される。

義務的ピットストップは日曜に1回

2026年規則38.5条と38.9条では、フィーチャーレースを走行可能な各ドライバーに、指定された作業エリアへ1回入る義務を定めている。義務的ピットストップでは少なくとも2輪を交換しなければならない。一方、土曜スプリントはピットへ入ること自体はできるが、同じ義務停止は設定されていない。

ここで注意したいのは、「ピットレーンを通過した」「何らかの作業をした」だけでは、必ずしも日曜の義務を消化したことにならない点だ。規則が認めるタイミングと作業条件を満たした停止かどうかを確認する必要がある。

F2の週末全体のグリッドや配点については、FIA F2・FIA F3のレース形式ガイドで整理している。本稿では、そのうち日曜の戦略部分に焦点を絞る。

6周を完了するまでは消化できない

規則38.9条は、ドライバーが6周を完了するまで義務的ピットストップを行えないと定める。この条件に反して早く入った停止は、義務停止を済ませたものとして扱われない。接触やパンクなどで序盤に緊急停止を強いられた場合、そこでタイヤを替えたとしても、条件を満たすために後でもう一度止まる必要が生じ得る。

通常のドライレースでは、早めに止まって新しいタイヤの速さを利用する「アンダーカット」と、コース上に残って空いた路面や後半の新しいタイヤを生かす「オーバーカット」が比較される。ただしF2では、6周完了という境界より前に義務停止を前倒しすることはできない。中継で序盤のピットインを見るときは、単に「早い戦略」と判断せず、何周を完了した時点かを確認したい。

VSC中は原則として義務停止にならない

バーチャル・セーフティカー(VSC)導入中も重要な境界になる。38.9条によれば、VSC中の義務的ピットストップは原則として認められない。ただし、VSCが導入された時点ですでにピット入口またはピットレーンにいたドライバーは例外となる。

したがって、VSC表示後にピットへ向かいタイヤを交換しても、その停止だけでは義務を消化できない場合がある。画面上では同じタイヤ交換に見えても、VSC導入の瞬間に車両がどこにいたかで扱いが分かれる。公式タイミング、レースコントロールの表示、チーム無線を合わせて見ると、再停止が必要な車両を把握しやすい。

また、ペナルティーに伴って必要となるピットストップと義務停止を同時に済ませることも、38.9条が挙げる条件では認められない。レース中にペナルティーが表示された際は、通常の戦略停止と処分の履行を別々に追う必要がある。

ドライなら「prime」と「option」の両方を使う

2026年規則24.1条は、各大会でドライ用タイヤを2仕様用意し、識別できるようにすると定める。供給枠は1台につきprimeが3セット、optionが2セットで、ウェットは3セット。1セットは前後各2本の計4本で、同じ仕様で構成される。

さらに24.15条により、フィーチャーレースでウェットタイヤを使用していないドライバーは、ドライの各仕様を少なくとも1セットずつ使わなければならない。つまり通常のドライ条件では、義務停止の有無だけでなく、primeとoptionの両方を使ったかも成立条件になる。完走しながら両仕様を使わなかった場合は失格と規定されている。

このためスタート時の仕様は、後半に残す選択肢を決める。optionから始めて早い段階のグリップを生かすのか、primeで長く走って終盤にoptionを残すのか。新品・中古の状態、路面温度、タイヤ劣化、前後の交通状況が重なり、同じグリッド付近でも停止時期が分かれる。

雨が絡むとドライ2仕様の義務は外れる

24.15条のドライ2仕様使用義務には、「フィーチャーレースでウェットタイヤを使用していない場合」という条件がある。実際にウェットタイヤを使用したドライバーには、このドライ2仕様の義務は適用されない。

これは、雨が宣言されただけで全車の条件が一律に消える、という説明ではない。条文は各ドライバーがウェットタイヤを使用したかを基準にしている。天候が変化するレースでは、どの周に雨用へ交換したかだけでなく、各車が実際に履いた仕様を確認する必要がある。

レースが中断され、再開できない場合には特則もある。両ドライ仕様を使えなかった場合や義務停止を完了していない場合、規則は条件に応じて走行時間へ30秒を加算するとしている。通常どおり再開・完走した場合と処理が異なるため、赤旗終了時は暫定順位だけで結論を出さず、公式分類を待ちたい。

中継では「未停止組」と「停止済み組」を分ける

フィーチャーレースを追うときは、画面の順位に次の4項目を重ねると戦況が読みやすい。

  1. 義務的ピットストップを有効に完了したか
  2. スタートしたタイヤはprimeかoptionか
  3. 現在のタイヤは新品か中古か
  4. VSC、赤旗、雨用タイヤの使用で条件が変わっていないか

首位が大きな差を持っていても未停止なら、ピットレーン通過と作業で順位を失う余地がある。反対に、停止済みの車両が一時的に下位へ落ちても、未停止組が入れば前へ戻る可能性がある。中継の順位表だけではなく、ピットストップ回数とタイヤ表示を併読する理由はここにある。

F2の日曜は、単に「全車が一度タイヤを替えるレース」ではない。停止が有効になる周回、VSC導入時の位置、2種類のドライタイヤ、雨天時の例外を切り分けることで、コース上の順位の裏にある実質的な争いが見えてくる。最終判断は、競技後に発行される公式分類とスチュワード文書で確認したい。

参照した一次情報