2026/8/22 / 参戦ガイド / GRIDLINE 編集部

ジムカーナ・ダートトライアルのパドック安全ガイド|移動・ジャッキ・給油の規則

ジムカーナやダートトライアルの安全規則は、競技コース上だけに適用されるものではない。サービスカー、競技車両、人が近い距離で動くパドックでは、車両の移動、ジャッキアップ、燃料保管、給油について具体的な条件が定められている。

2026年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則は、会場内の移動を最徐行とし、エンジン始動中のジャッキアップや燃料の扱いにも基準を置く。初参加者は工具とタイヤだけでなく、安全作業に必要な装備と役割分担まで準備しておきたい。

パドックはウォームアップ走行の場所ではない

統一規則第16条は、競技コース以外の会場内を移動するときは最徐行とし、ウォームアップランやブレーキテストを禁止する。タイヤやブレーキの状態を確かめたい場合でも、人と車両が混在する通路で加減速を繰り返してよい規定ではない。

ゴール後の減速にも手順がある。フィニッシュライン後の直線区間、つまり減速レーンでは一旦停止せず、最徐行で移動する。減速レーンを通過した後、パドックへの導入路で一旦停止してからパドックへ移る。

大会ごとに導線と停止位置は異なる。コース図には停止線やパドック導入路、出走前にサービス可能な最終地点などが記載されるため、慣熟とブリーフィングで確認する。コース図にない自己流の停止位置を設けると、後続車や競技運営を妨げる可能性がある。

エンジン始動中のジャッキアップには条件がある

パドックでタイヤや駆動系を確認するとき、エンジンを始動したまま車両を持ち上げる作業には特に注意が必要だ。統一規則第16条7項は、エンジン始動中にジャッキアップを行う場合、リジットジャッキ、一般に「ウマ」と呼ばれる支持具を使用し、ドライバーまたはメカニックが乗車することを求める。それ以外のエンジン始動中のジャッキアップは禁止される。

油圧ジャッキだけで車体を支えたままエンジンを始動する、無人の車両で駆動輪を回す、といった作業はこの条件を満たさない。作業前に平坦で安定した場所を選び、支持点、輪止め、周囲への立入防止を確認する。規則に明記された条件を満たしていても、使用機器の説明書と大会スタッフの指示を優先し、安全を確保できない場合は作業を中止する。

エンジンを停止した通常のジャッキアップでも、ジャッキは持ち上げる道具であり、長時間車体を保持する支持具とは限らない。車体下へ入る作業は、適切なリジットジャッキを正しい支持点へ設置してから行う。

燃料は消防法に適合する金属製携行缶で保管する

統一規則第16条8項は、パドック内で燃料を保管する場合、消防法に適合した金属製携行缶に入れるよう定める。また、パドックへ持ち込む燃料は総量20リットル以上としてはならない。

ここで注意したいのは、「20リットル缶なら無条件でよい」という意味ではないことだ。容器が適合品であること、キャップやエア調整ねじが正常であること、直射日光や熱源を避けること、転倒しない場所へ置くことを確認する。樹脂製の一般容器、飲料用容器、表示のない容器へ小分けする運用は避ける。

車内に長時間置いた携行缶は、温度上昇で内圧が高くなることがある。開栓手順は製品の取扱説明に従い、火気のない通風のよい場所で扱う。静電気、こぼれ、蒸気の滞留も考慮し、喫煙場所や発電機などの着火源から離す。

給油時は3kg以上の粉末消火器を準備する

パドック内で給油する場合、統一規則第16条9項は、国家検定に合格した薬剤質量3kg以上の粉末消火器を準備するよう定める。車両用の小型消火具を積んでいるだけでは、薬剤質量の条件を満たすとは限らない。消火器本体の表示、使用期限、圧力計、封印、腐食や損傷を事前に確認する。

消火器はサービス車の奥に積んだままにせず、給油担当とは別の担当者がすぐ操作できる位置へ置く。給油口と携行缶の周囲を整理し、エンジンや電装品を停止し、火気がないことを確認する。こぼれた場合に備えて吸着材や処理袋も用意しておくと、現場を安全に復旧しやすい。

大会の特別規則や会場規則が、給油可能な場所と時間、給油禁止、追加の消火器要件を定めることもある。その場合は、統一規則だけを根拠に任意の場所で給油せず、大会側の指定に従う。

競技車両の作業には技術委員への確認も必要

公式車両検査に合格した後、車両の調整、変更、交換作業をする場合は、競技会技術委員長の許可を得る。作業後は技術委員長へ申告し、車両の規則適合性について再確認を受ける必要がある。

タイヤ交換や部品交換が機械的に安全でも、競技規則上自由にできるとは限らない。全日本ジムカーナの対象車両には、マーキングされた4本のタイヤを正式結果発表または保管解除まで変更、交換、裏組みできない規定がある。安全作業の確認と競技上の適法性確認を分けず、作業前に両方を確かめる。

サービス員を含めた役割分担を決める

パドック作業は、ドライバー一人で抱え込むと確認が抜けやすい。大会前に次の役割を決めておきたい。

  • 車両誘導と周囲の歩行者確認
  • ジャッキとリジットジャッキの設置確認
  • 給油担当と消火器担当
  • 工具、部品、燃料の管理
  • 技術委員への作業許可・作業後申告
  • 公式通知と場内放送の確認

サービス員も参加申込や誓約の対象となる場合がある。入場方法、サービス登録、人数、車両、パドック配置は大会の特別規則と所定様式で確認する。

会場へ持ち込む前のチェックリスト

  • 金属製燃料携行缶が適合品で、漏れや損傷がない
  • 持込燃料総量が統一規則と大会規則の範囲内である
  • 国家検定合格、薬剤質量3kg以上の粉末消火器が使える状態にある
  • 油圧ジャッキとは別に適切なリジットジャッキを用意した
  • 輪止め、手袋、吸着材など安全作業用品を用意した
  • パドックの導線、最徐行、停止位置を全員が確認した
  • 合格後の作業許可と再確認の担当者を決めた

パドックは整備場所であると同時に、多数の参加者と競技役員が働く共有空間である。速く作業することより、動線を守り、車体を確実に支持し、燃料と着火源を管理することが先に来る。具体的な大会運用は、当該大会の特別規則、公式通知、ブリーフィングを最終確認とする。

一次情報